野の春 宮本輝

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ついに来た

流転の海の完結

宮本輝氏が37年かけて完結させた小説


第1巻『流転の海』
を読んだのは多分18歳の時

通学電車で色々な本を読み漁っていた頃

宮本輝氏の作品に出会ってから何十年と
好きな小説家は『宮本輝』は変わっていない

それぞれの作品に思い入れはあるけれど
今回は『野の春』について

流転の海シリーズ第9巻
遂に完結の時が来た
18歳からなので足かけ27年
宮本輝氏にとっては足かけ37年の小説になるので10年ほど短くなるが
私の中でも長い年月を共にしてきた小説となる

就職、結婚、母の死、子供はいない、自身が体験してきた様々な事とリンクしながら
もちろん宮本輝氏の数々の作品ともリンクしながら

こんな大きなバックグラウンドの元で小説を読んだのは初めての事
そして今後このように読める作品もないだろう
今からはじまれば寿命までに間に合うかもしれないけれど

寂しさと嬉しさと愛おしさと楽しさと
読みながら感情がごちゃ混ぜになり


読み終えました。

人間の業
人間の幸福

ひととひと

宮本輝氏の小説のテーマはいつも変わらない
故にどの小説も味がある

けれどやっぱり流転の海シリーズは格別だった

小説で泣くことはあるし
第8部の房江の自殺未遂の時も涙がでてしかたなかったが

野の春を読んでの涙は
伸ちゃんの成長に対してだったり
熊吾の老いに対してだったり
房江の生き方に対してだったり
感動、悲しみではない家族愛的な涙だった

書けば書くほど本質とは離れて行く気がするが
書かずにはいられない程感情を揺さぶられた

37年かけ
そして完結まで書き続けた作品に
比較的早く出会えた事と一緒に年を重ねられた奇跡に喜びと感謝であふれている

2018.11